なぜ女性は陰部神経痛になりやすいのでしょうか?
陰部神経痛は、男性より女性、特に40代以降の女性に多いとされています。それには、女性の体ならではのいくつかの理由が重なっています。
① 骨盤の形
女性の骨盤は、赤ちゃんが通れるように男性より横に広く、底の出口も大きくできています。そのため、骨盤の底を支えるハンモックのような筋肉(骨盤底筋)も広い範囲に張られていて、男性に比べてたるみやすい構造です。痛みの原因になる神経は、このハンモックのすぐそばを、骨と靭帯のすき間を縫うように通っています。ハンモックがたるむと、神経が引っ張られやすくなります。
② 出産の影響
お産の時、赤ちゃんの頭が下りてくると、骨盤の底の筋肉と一緒に神経も大きく引き伸ばされます。お産に時間がかかった方、大きな赤ちゃんを産んだ方、器具を使ったお産を経験した方では、その影響が大きくなりがちです。出産直後は若さと女性ホルモンの力で回復していても、何十年も経って年齢を重ねた頃に、そのダメージが症状として表に出てくることがあります。
③ 女性ホルモンの減少
女性ホルモン(エストロゲン)には、次のような働きがあります。
- 靭帯や筋肉をしなやかで丈夫に保つ
- 陰部の皮膚や粘膜をうるおいのある厚い状態に保つ
- 血流を保つ
- 痛みを感じにくくする
閉経前後にこのホルモンが減ると、骨盤の底を支える力が弱まり、陰部の皮膚や粘膜も薄く敏感になります。そのため、同じ刺激でも痛みを感じやすくなります。
④ お腹の脂肪と、お尻のクッションの変化
年齢とともに、お腹の内側(内臓のまわり)に脂肪がつきやすくなります。内臓の重さが増えると、骨盤の底は毎日上から押され続けて、少しずつ下がっていきます。その一方で、お尻の筋肉や皮下の脂肪は減っていくため、座った時に神経を守るクッションが薄くなります。「上から押されて下がる」ことと「下のクッションが薄くなる」ことが同時に起こるため、座った時の痛みにつながりやすくなるのです。
⑤ 子宮脱・膀胱脱(骨盤臓器脱)
骨盤の底の支えが弱くなると、子宮や膀胱が下に下がってくることがあります。こうなると骨盤の底全体が下がり、神経はさらに強く引き伸ばされます。次のような症状がある方は、骨盤臓器脱が隠れていることがあります。
- 股に何かが挟まっている感じがする
- 夕方になると下がってくる感じがする
- 尿が出にくい、残っている感じがする
婦人科で相談すると、器具を入れる治療や手術など、支えを取り戻す方法があります。
⑥ 性的な機能の衰え
デリケートな話ですが、大切なことなのでお伝えします。性的な機能が衰えたり、そうした機会が減ったりすると、陰部への血流が少なくなり、皮膚や粘膜、筋肉がやせて乾燥しやすくなります。また、性交時の痛みを経験すると、体が無意識に身構えるようになり、骨盤の底の筋肉がいつも緊張した状態になることがあります。この緊張が、神経をさらに締め付ける原因になります。気になることがあれば、恥ずかしがらずにご相談ください。婦人科で使える塗り薬やお薬もあります。
原因はひとつではありません
陰部神経痛は、ひとつの原因で起こるというより、これらがいくつも重なって起こることがほとんどです。当院では、痛みの場所や出方を丁寧にお聞きして、どの原因が強く関わっているかを見極めたうえで治療を組み立てます。必要に応じて婦人科とも連携しながら、一緒に改善を目指しましょう。