男性の陰部神経痛と「慢性前立腺炎」
男性で、会陰(陰嚢と肛門の間)、睾丸、ペニスの付け根、肛門のまわりなどが痛み、特に座っていると悪化する。こうした症状で泌尿器科を受診すると、多くの場合「慢性前立腺炎」と診断されます。
ところが、実は慢性前立腺炎と診断された方の9割以上は、検査をしても細菌が見つかりません。前立腺そのものではなく、骨盤の底の筋肉のこわばりや、そこを通る神経(陰部神経)の締め付けが痛みの本当の原因になっていることが多いのです。抗生物質を何度飲んでも良くならない方は、このタイプの可能性があります。
では、なぜ男性にこうした痛みが起こるのでしょうか。
① 男性の骨盤の形
男性の骨盤は、女性に比べて幅が狭く、縦に深い形をしています。座った時に体を支える左右の骨(坐骨)の間隔も狭く、骨盤の内側に向かって骨の出っ張り(坐骨棘)が強く張り出しています。痛みの原因になる神経は、この出っ張りと靭帯のすき間を通っているため、男性では神経の通り道が窮屈になりやすい構造です。
② 性器が体の外に出ている構造
男性の性器は体の外に出ていて、脚の付け根の真ん中にあります。座ると太ももの間に挟まれやすく、その後ろにある会陰部には体重による圧がかかります。陰嚢やその中の睾丸は、筋肉のように伸び縮みして圧力を逃がすことができません。股間の限られたスペースで、性器と会陰部、そこを通る神経がいつも押されやすい状態にあるのです。
動物を見ると、四本足の動物は自分の性器や会陰部の上に体重をかけて長時間座ることはしません。人間が椅子に何時間も座り続ける生活は、体の仕組みから見るとかなり無理のある姿勢なのです。デスクワーク、長時間の運転、自転車に乗る習慣のある方は特に注意が必要です。
③ 股を開き慣れていない
女性は出産や日常の動作の中で股関節を開く機会がありますが、多くの男性は股を大きく開く習慣がありません。そのため、太ももの内側や骨盤の底の筋肉が硬く縮こまりやすく、神経の通り道をさらに狭くしてしまいます。
④ 「男だから我慢する」
男性は痛みやつらさを顔に出さず、我慢してしまう方が多くいます。特にデリケートな場所の痛みは、人に相談しにくいものです。ところが、我慢している間も、体は痛みに耐えようと骨盤の底に力を入れ続けています。そして我慢が限界に達した時、痛みが一気に強くなって表に出てくることが少なくありません。
⑤ ストレスで脳が疲れた時
仕事のプレッシャーや睡眠不足で脳が疲れると、脳の「痛みのブレーキ」の効きが悪くなります。同時に、不安を感じる部分が働きすぎて、同じ刺激でも痛みを強く感じるようになります。忙しい時期や大きなストレスがかかった時に急に悪化するのはこのためです。
⑥ 「性病では?」と疑われるつらさ
陰部の痛みで病院に行くと、多くの場合、まず性感染症の検査を勧められます。医師にとっては決まった手順のひとつです。でも患者さんにとってはそうではありません。
まったく思い当たることがなくても、検査を勧められたその瞬間に「疑われているのでは」と感じ、胸がドキッとします。家族やパートナーにどう話せばいいのか、もし誤解されたらどうしよう。痛みの相談に来たはずが、検査を告げられた時点で、恥ずかしさと居心地の悪さ、説明のつかない後ろめたさまで抱えることになります。結果を待つ間も気が気ではありません。
この緊張と動揺は、脳を一気に疲れさせ、骨盤の底の筋肉をさらにギュッと縮こまらせます。ただでさえ痛みを我慢してきたところに、この精神的な負担が加わることで、痛みが一段と強くなってしまう方が少なくありません。
あなたの痛みには、ちゃんと理由があります
男性の陰部や会陰部の痛みは、骨盤の形、性器の構造、座る生活、筋肉のこわばり、我慢、ストレスなど、いくつもの要因が重なって起こります。決して気のせいでも、恥ずかしいことでもありません。
当院では、痛みの場所や出方を丁寧にお聞きして、筋肉のこわばりや神経の締め付けがどこで起きているかを見極め、鍼治療で直接アプローチします。
なお、発熱がある、尿に血が混じる、尿が出にくい、といった症状がある場合は、まず泌尿器科を受診してください。必要に応じて医療機関とも連携しながら、一緒に改善を目指しましょう。